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「全てを知りうる存在」

以前の記事で量子論の基本的な考え方についてお話しました。
参照:>>シュレディンガーの猫
時間的には前後しますが、その量子論が登場する以前に世界を支配していた法則であるニュートン力学=古典力学の最高到達点の一つ、ラプラスの悪魔Laplace's demon)についてお話したいと思います。

19世紀の物理学者・ピエール=シモン=ラプラスは自著の中でこのような主張を行いました。
「もしもある瞬間における全ての物質の力学的状態と力を知ることができ、かつもしもそれらのデータを解析できるだけの能力を有する知性が存在するとすれば、この知性にとっては不確実なことは何もなくなり、その目には未来も過去同様に全て見えているであろう」
 ― 『確率の解析的理論』(1812年)

ある時点において特定の原子の位置と速度がわかれば、情報を分析することでその原子の未来の運動を予測することができます。
分析する範囲を全世界の全ての原子に広げた場合、究極的には全ての物質の将来の位置を知ることができる=全ての未来を知ることができる、ということになります。

このような能力を持った超越的な存在のことをラプラスは「知性」と表現しました。
それが後に「ラプラスの悪魔」と呼ばれるようになり、全てを知りうる存在として有名になりました。

しかし、物質の運動を理解することができても、それは未来を知ることとどのようにつながっているのでしょうか。

サイコロの例を考えてみましょう。
1回だけこのサイコロを振る場合、それぞれの目が出る確率はどれくらいになるでしょうか。

多面体ダイス(今回は普通の立方体を考えます)


答えはいたって簡単です。
このサイコロが正確な立方体であり、欠けたところや変な細工が施されていない限り、それぞれの目が出る確率は1/6ずつになります。

確率的に1/6とわかっているということは、裏を返せば確率的にしか判らないということになります。振ってみるまでどの目が出るかはわからないのです。

ではこの「わからない」とは何を指すのでしょうか。

続きます
>>ラプラスの悪魔 2
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前回の記事
>>ラプラスの悪魔

持って回った言い方をしましたが、「わからないこと」は人間にとって「知りえないこと」とはまた別のものだということです。

サイコロの目が出るという現象は、一見確率の問題のように見えます。
しかし、実はこれは単なる物理的な現象の連鎖とも考えられます。

サイコロを振った瞬間、サイコロには手から力が加わっています。そして回転しながら落下する途中に空気抵抗を受けて角度を変え、机にぶつかれば机との摩擦でさらに向きを変えます。

手からサイコロに伝わる力、空気抵抗、接触する際に触れる頂点とその角度、机の凹凸との摩擦。

これらは全て単純な物理現象です。
情報さえあればニュートン力学の範囲で分析を行うことができます。

つまり、これらの情報を調べて知ることさえできれば、どの目が出るのかは正確に予想することができるわけです。

「知りえないこと=原理的に知ることが不可能」なのではなく、ただ人間の知能が及んでいないために「わからないこと=実際に観測することが困難」なのです。

ラプラスはこの「正確な観測と複雑な計算」を行う存在としてラプラスの悪魔を考えました。
その知性にはサイコロを振った瞬間に、もしくはサイコロを振る前に、あるいはサイコロが作られた時点から、それよりもっと前、宇宙が生まれた瞬間から、どの目が出るか正確に予見することができるのです。

少し話がそれます。
映画「マトリックス」のなかで、主人公ネオの師匠であるモーフィアスがこのように語っています。
「君が認識している世界というのは、脳の中を流れる電気信号に過ぎない」


「Everything that has a beginning has an end」

人の感情は全て脳内で分泌される化学物質により認識されます。
好きという気持ちはドーパミンが、不安な気持ちにはノルアドレナリンが、といった具合に分泌される脳内物質により人の感情は動いています。
参照:>>A10神経
脳内の物質の位置と速度さえわかれば、それが将来どのような位置に移動し、どのような効果を発揮するのか正確に予想することができます。(脳内物質も物理法則にしたがって運動しているためです)
つまりラプラスの悪魔には全ての人の気持ち、その将来の変化までも見えています。
あなたがこのブログを読んでニヤついていることや、いつ誰のことを好きになるのかも、です。

ラプラスの想定した悪魔は、いかなる現象も過去の出来事の結果に過ぎないという世界観:「決定論」の基本的な考え方となりました。
実際に観測することが難しいため人間にはわからないが、未来は全て一意的に決まっている、という因果律に基づく考え方です。

しかし、上の「始まりのあるものには全て終わりがある」という言葉の通り、やがてラプラスの悪魔も死を迎える時が来ました。

続きます
>>ラプラスの悪魔 3
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