最高を称える賞があれば、最低を表彰する賞もあります。
以前ご紹介したゴールデンラズベリー賞は、映画界最高の賞・アカデミー賞のパロディでした。同じように、世界で最も栄誉ある賞の1つ・ノーベル賞にも、その対極に位置する賞・イグノーベル賞があります。
参照:>>ゴールデンラズベリー賞

イグノーベル賞は、「人々を笑わせ、そして考えさせてくれる」一風や二風変わった研究に対して送られる賞です。
何のためにやってるのかわからないおかしな研究が受賞することもあれば、日のあたることの少ない地道な科学研究に対して送られることもあります。

受賞内容を見てもらえば早いかと思います。
受賞者の名前の横にあるのは受賞の際につけられた二つ名です。

■1991年
・化学賞 ジャック=ベンベニスト(多作な宗教勧誘者にして、学術誌『ネイチャー』への熱心な寄稿者)
 水、H2Oが知能を持つ液体であるということをしつこく発見し続けたことと、水は物事の痕跡が完全に消え去った後でも、その出来事を長い間記憶することができるという彼の満足するような結果を導いたことに対して。
(ネイチャー誌に『信じられないような出来事を信じる時が来た』という再現性のない実験を羅列した論文を掲載した事を指しています)

・教育賞 J=ダンフォース=クエール(時間の浪費者にして空間の占領者、あとは米国副大統領)
 科学教育の必要性を誰よりもよく立証したことに対して。
(パパ・ブッシュの時の副大統領。文法の破綻した意味不明の発言や簡単な単語のつづり間違い、基礎的な教養の欠如で有名)

■1992
・医学賞 F=カンダ、E=ヤギ、M=フクダ、K=ナカジマ、T=オオタ、O=ナカタ
 先駆的な研究である「足の臭いの原因物質の解明」、特に「自分の足が臭いと思っている人の足は臭く、思っていない人の足は臭くない」という結論に対して。

・文学賞 ユーリ=ストルチコフ(モスクワ有機元素化合物研究所の、誰にも止める事の出来ない執筆者)
 1981年から1990年の間に948報、平均で3.9日ごとに1報以上の割合で科学論文を発表し続けたことに対して。

■1993
・数学賞 ロバート=フェイド
 ミハイル=ゴルバチョフが反キリスト教徒である正確な確率(710,609,175,188,282,000分の1)を導き出したことに対して。
(ゴルビーは当時のソビエトの最高指導者にして最後の大統領。ちなみに本物のノーベル平和賞受賞者)

・文学賞 E=トロパル、R=カリフ、F=ヴァンドワーフ、P=W=アームストロング、他972名
 論文のページ数の100倍以上も著者がいる論文を執筆したことに対して。その他の著者の出身国は以下の通り(15カ国、省略)。

・医学賞 ジェイムス=F=ノーラン、トーマス=J=スティルウェル、ジョン=P=サンズ=ジュニア (慈愛に満ちた医療者)
 彼らの痛々しい研究論文、『ジッパーに挟まれたペニスの緊急処置法』に対して。
(是非とも国から補助k)

■1995
・心理学賞 シゲル=ワタナベ、ジュンコ=サカモト、マスミ=ワキタ
 ピカソとモネの絵画を見分けられるようにハトを訓練し、成功したことに対して。

・文学賞 デイヴィッド=B=ブッシュ、ジェイムズ=R=スターリング
 研究論文『直腸内の異物:事例報告と世界の文献の総説』に対して。論文では以下のものについての事例が報告されている。
「電球7つ、ナイフの砥石、懐中電灯2つ、ばね、かぎタバコ入れ、ストッパーのついたオイル缶、11個の異なる種類の果物や野菜や食べ物、宝石職人用のこぎり、凍ったブタのしっぽ、ブリキ製カップ、ビールグラス、さらにある特筆すべき患者は、メガネ、スーツケースの鍵、タバコ入れ、雑誌を一度に収納していた」

■1996
・生物学賞 A=バーハイム、H=サンドヴィク(諾、ベルゲン大学)
 彼らの研究、『エール、にんにく、およびサワークリームが、ヒルの食欲に与える影響』に対して。

・物理学賞 R=マシューズ(英、アストン大学)
 彼の行ったマーフィーの法則についての研究、特にトーストはほとんどの場合バターを塗った面を下にして落下するということを実証したことに対して。
参照:>>バター猫のパラドックス

・生物多様性賞 C=オカムラ(岡村長之助)(名古屋、岡村化石研究所)
 恐竜、馬、ドラゴン、その他1000以上の、どれも全長0.25mm以下の絶滅した「小さい種」の化石を発見したことに対して。
(東北地方を中心とする地域の3億年前の地層からミニ原人やミニ動物を多数『発見』したと発表し、自著を世界中の大学や研究機関に送りつけるなどしてなど古生物学界に混乱を巻き起こした人物。主な著書に『人類および全脊椎動物誕生の地-日本』など)

・文学賞 『ソーシャル・テキスト』誌の編集者
 著者の言っていることには全く意味が無く、さらには全く根拠もないような論文を、自分達では理解もしないまま熱心に出版したことに対して。
(当時の哲学者や社会学者が、科学用語をしっかり理解しないままに引用して自著の権威付けに使っていた事を批判するため、物理学者アラン=ソーカルがでたらめな数式や用語を羅列したインチキ論文を作成して権威ある雑誌に投稿したところ、見事に掲載されてしまったというソーカル事件を指しています)
参照:>>ソーカル事件

続きます
>>イグノーベル賞 2
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前回の記事 >>イグノーベル賞

変わった研究に対して送られるイグノーベル賞受賞者です。


■1998年
・生物学賞 ピーター=フォング(米)
 ハマグリにプロザック(抗うつ剤)を与え、彼らの幸福に貢献したことに対して。

・物理学賞 ディーパック=チョプラ(米、善くあるためのチョプラセンター所長)
 人生、自由、そして経済的幸福の追求に適用する際における、量子物理学のユニークな解釈に対して。
( 『人生に奇跡をもたらす7つの法則』『迷ったときは運命を信じなさい』などの著作がある代表的な疑似科学者)
参照:>>シュレディンガーの猫
    >>ラプラスの悪魔

・文学賞 マラ=シドリ(米)
 彼女の輝ける論文、『発話恐怖症に対する防衛方法としての放屁』に対して。

■1999年
・生物学賞 P=ボスロンド(米、チリ・ペッパー研究所理事)
 辛くない唐辛子の作成に成功したことに対して。

・平和賞 シャール・フーリエ、ミカエル・ウォン(南阿)
 自動車強盗を火炎放射器で撃退する自動車泥棒警報器を発明したことに対して。
(当時のヨハネスブルグの治安は最悪)

■2000年
・計算機科学賞 クリス=ニスワンダー(米)
 猫がコンピュータのキーボード上を歩くのを検出するソフトウェア「パゥ・センス」を発明したことに対して。
(パゥ=ネコなどの肉球のある動物の手)

・平和賞 イギリス海軍
 海兵隊に実弾を使うことを止めさせ、代わりに「バーン!」と叫ばせたことに対して。
(射撃訓練における実弾使用を減らし、ある程度の予算削減効果があったそうです)

■2001
・医学賞 ピーター=バルス(加)
 彼の衝撃的な医学論文、『落下するココナッツによる負傷』に対して。
(バルス!)

・技術賞
 ジョン=ケオフ(豪)   2001年に車輪の特許を取得したことに対して。
 オーストラリア特許庁 ケオフに開発特許2001100012を認可したことに対して。
(新しい特許制度の下ではほとんど審査が行われないという不備を指摘するため、ケオフが『環状の運搬補助装置』という名前で車輪を特許申請、受理された事件を指しています。まさに車輪の再発明)

■2002年
・衛生学賞 Eセグラ、R=アステ(西)
 猫と犬の洗濯機を発明したことに対して。

・文学賞 B=シルヴァーズ、D=クレイナー(米)
 彼らの鮮やかな論文、『小論文を読む際に、前もって引いておいた不適当な強調線が読み手に与える影響』に対して。

・平和賞 佐藤慶太(タカラ株式会社社長)、鈴木松美(日本音響研究所所長)、小暮規夫(小暮動物病院常任理事)
 コンピュータによって自動的にイヌ語をヒト語に翻訳する機械「バウリンガル」を発明し、種のあいだの平和と調和を促進したことに対して。

バウリンガル
バウリンガル

■2003
・物理学賞 J=ハーヴェイ、J=カルヴェーノ、W=ペインズ、S=コール、M=ローレンス、D=スチュアート、R=ウィリアムズ(豪)
 彼らの逆らい難い論文、『様々な物質の表面上で羊を引きずる際に必要な力の分析』に対して。

・心理学賞 J=キャプラーラ、C=バーバラネリ、F=ツィンバルド
 彼らの論文、『政治家の特異的に単純な性格』に対して。

・境界領域研究賞 S=ギルランダ、R=ヤンソン、M=エンクイス(瑞)
 当たり前といえば当たり前の結論を導いた論文、『ニワトリはどちらかというと美人を好むらしい』に対して。

・生物学賞 C=モーライカー(蘭)
 野生のアヒルの中に同性愛の屍姦愛好者がいるということを示す、世界で始めてとなる科学的な証拠を示したことに対して。

■2004年
・公衆衛生賞 J=クラーク(米)
 床に落ちた食べ物を食べても安全かどうかについての「5秒ルール」の科学的妥当性の研究に対して。

・工学賞 D=J=スミスおよび彼の父、故F=J=スミス(米)
 「バーコード頭」という髪型の特許(米国特許#4022227)を取得したことに対して。

・平和賞 井上大佑(日、大阪府)
 カラオケを発明し、人々がお互いに許容しあうための全く新しい方法を提供したことに対して。
(歌によって与える苦痛をお互いに受け入れることを指しています。ちなみに井上さんはタイム誌の『今世紀もっとも影響力のあったアジアの20人』にも選ばれています)

■2005年
・物理学賞 J=メインストーンおよび故T=パーネル(豪)
 1927年に故パーネルが始めて以来、ずっと辛抱強く行われている実験に対して。
(粘度の高い黒タールをろうとに入れ、ゆっくりゆっくり垂れていく様子を観察するという実験。長年にわたる観察の結果、約9年ごとに一滴おちることが判明。実験開始からの80年間で10滴ほどが落ちたことになります)

・化学賞 E=カスラー、B=ゲッテルフィンガー(米)
  「人間はシロップの中と水の中ではどちらの方が早く泳げるのか?」という長年の科学的疑問に解を与えるため、念入りな実験を行ったことに対して。

■2006年
・鳥類学賞 A=シュワブおよび故F=R=A=メイ(米)
 なぜキツツキは(あれだけ頭を打ち付けているのに)頭痛がしないのかを研究したことに対して。
(参考:メイの主著『キツツキと頭部傷害について』)

・音響学賞 D=ハルパーン、R=ブレイク、J=ヒレンブランド(米)
なぜ人々は黒板に爪を立てる音を嫌がるのか解明するための実験を行ったことに対して。

・数学賞 N=スヴェンソン、P=バーンズ(豪)
 集合写真を撮る際に、誰も目をつぶっていない状態で写真を撮るためには、何人いる場合何枚撮れば確実か、を計算したことに対して。

・物理学賞 B=オドリ、S=ノイキルヒ(仏)
 乾いたスパゲティを曲げると、何故2つではなくそれ以上の数の破片になってしまうのか、という研究に対して。
(ほんと不思議!)

■2007年
・医学賞 B=ウィットコーム(医師)、D=メイヤー(パフォーマー)
 彼の鋭い論文、『剣を飲み込む芸とその副作用』に対して。

・言語学賞 J=B=トロバロ、N=S=ガジェス(西)
 ラットは日本語の逆さ言葉を話す人とオランダ語の逆さ言葉を話す人とを聞き分けられない場合があるという発見に対して。
(普通に話せばわかるという前提で話が進んでいます)


まさに研究者魂。


関連項目:
>>君は牛を二頭持っている
>>マーフィーの法則 [1]
>>ヘンペルのカラス
>>1=2の証明
>>ゴールデンラズベリー賞
>>世界最速の鉄道
>>おもしろ法律 [1]
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