「量子力学とシュレディンガーの猫」

世界を限りなく細部まで観察していくと、最後はミクロの世界にたどり着きます。そこでは私達に馴染みの深いニュートン力学などの古典力学が通用しない、独特の現象が観測されます。ミクロの世界で起きる出来事を記述するための体系が量子論です。
決定論を支えた古典力学とそこに生まれた怪物、ラプラスの悪魔については以下を参照。
参照:>>ラプラスの悪魔

ミクロの世界では物質の消滅・出現、通り抜け、瞬間移動など、人々の感覚とはかけ離れた現象が普通に起こりえます。
そんな特殊な法則が支配している世界を記述する方法として、量子力学では対象を「状態の重ね合わせ」として捉えます。

「状態の重ね合わせ=並存状態」は量子力学特有の考え方で、
「対象を観察するまでは何か1つの状態には定まっていない」ことを指します。
感覚としては捉えにくい説明ですね。
例として、木箱がひとつあるとします。
その中にはボールが1個入っていますが、外からは見えません。いま木箱の真ん中に1枚の板を入れて、仕切りをつくりました。ボールは木箱の左右どちらかに入っているはずですが、もちろんどちらにあるのかは外からは知りようがありません。しかしいったん木箱のふたを開けてしまえば、右(or左)に入っていたことが判明します。この操作を何回も繰り返した場合、左右の部屋からボールが出てくる確率はそれぞれ約50%ずつになります。

このように、観察するまではどちらの状態とも確定できないけど、観察することによって1つの状態がある確率で出現する、という考えが量子力学の基本になっています。

ここで重要なのが、木箱の左右どちらにボールが入っていても、外から見ている限り木箱にはなんの変わりもない=外部に影響を与えない、という点です。木箱の重さや外見などは左右どちらの部屋にボールが入っていても変化しません。当たり前のように聞こえるでしょうが、これが量子力学の世界では重要な前提になってきます。

木箱の仕切りの数を9つに増やした場合を考えてみます。出来る部屋の数は10個ですが、今回は真ん中にボールが集まりやすいような状況を考えてみます。何回か操作を繰り返した結果、ボールは以下のような分布を示しました。
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9|||||
10||
今回は真ん中に近い部屋でよくボールが発見されたようです。
箱のふたを開ける前=観察前の状態を知ることは出来ません。しかしボールは1〜10のいずれかの部屋にそれぞれ一定の確率で存在しており、ふたを開けることによってボールの場所は一点に決定されます。つまり観察前のボールはそれぞれの部屋に一定の確率で同時に存在している、と考えても外の世界には影響を与えません。

このように、量子力学では物質が一定範囲の空間内に特定の確率で同時に存在する=状態が重なり合っている、と捉えています。(実際に同時に存在しているわけではなく、そう捉えても全く問題がないと主張しています)。この「物質がそこに存在する確率」を表すのには波(波動関数)を使います。上の1〜10も一応波の形です。状態が重なり合っている対象を観察することによって1つの状態に決定=波の収束がおきます。

観察の前に物質は波動関数に従った空間的な広がりを持って存在していること、観測する時点では一点に収束していること、収束する確率は確率解釈に依存していること。これら3つをあわせてコペンハーゲン解釈といいます。

量子力学における重要な基礎となったコペンハーゲン解釈ですが、反論もありました。そのひとつがかの有名な半死半生の猫=シュレディンガーの猫です。

続きます
>>シュレディンガーの猫 2
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