1.下にある白黒画像の上にマウスを重ねる
2.中央にある点を30秒ほど見つめる
3.できるだけ目を動かさずにマウスを画像から外す

一瞬、ただの白黒画像に鮮やかな色が付いているように見えたはずです。
いままで様々なだまし絵・錯視の画像を取り上げてきました。(だまし絵
[1] etc...)
しかし、そもそもなぜ人の視覚は「騙されて」しまうのでしょうか。
この問いの答えは人の視覚が働く仕組みにあります。
今回は特に「色」の感じ方について取り上げたいと思います。
たとえばリンゴを見た時、私たちはそれを「赤い」と感じます。
目を通じて送られてきた情報から、脳が「赤い」と判断したからです。
なぜ「赤い光が目に入ってきたから赤く見えるのだ」と書かないのでしょうか。それは、
実際に目に入ってきた光と、脳が感じる光の感覚とが必ずしも一致しないためです。
物が見えるということは、その物が光を反射しているということです。リンゴは主に赤い光を反射するから赤く見えるわけです。
裏を返すと、そこにある光しか反射され得ないため、その場所に存在している
光の種類によって物の色は決定されることになります。
例としてトマトを太陽光と蛍光灯の下で見た場合を考えてみましょう。
太陽光はほぼすべての波長の光をまんべんなく含んでいるため、赤い光が反射されてトマトは赤く見えます(逆に他の波長の光は吸収されている)。
一方蛍光灯の場合、含まれる光にはかなり偏りがあります。そして蛍光灯の下で見たトマトは、ほとんど赤い光を反射しません。

蛍光灯の発光スペクトル(含まれる光)
しかし、どこで見ようとトマトは頑としてトマトです。
決して屋内では紫色になって茄子と間違えられたりはしません。
ここから、私たちの脳が入ってくる情報を素直に受け取っているのではなく、勝手に補正をかけて「適当な」見え方を調整しているのだということがわかります。「この物ならこんな風に見えるだろう」と、本来なら含まれていないはずの色を知覚しているのです。
目から送られてきた情報を脳が補正しているだけでなく、私たちの眼自体にも錯覚を作り出す原因があります。
それが3種類の
錐体と網膜の神経節細胞の働きです。
外部から入ってきた光は網膜で像を結び、そこにある4種類の視細胞がそれを感知します。長〜短、各波長の光を感知するL・M・S、3種類の錐体と、暗い時に活動する桿体(かんたい)です。
各錐体には主に反応する光の波長があり、その反応比率に応じて脳が入ってきた光をどのように「見る」のか決定しているのです。
ところが、この錐体からの信号を受け取る神経細胞の中には、
特定の光を受けると強く反応する代わりに、また別の特定の光を受けると普段休んでいる時よりも反応が減ってしまうものがあります。赤⇔緑、黄⇔紫、青⇔橙などでこの関係がみられます。
お気付きのように、これらはいずれも
補色の関係にあります。
最初の画像でいえば、オレンジに塗られた空の部分を見ると、青色系で反応する神経細胞の活動が普段よりも抑え込まれます。その状態で色の付いていない灰色の画像を見ると、減っていた青色系の神経細胞の反応が上がります(もとに戻る)。その結果、空の部分に青色が付いているように感じられるのです。
以上のように、色情報の処理は、必ずしも光の物理的特性に忠実に従って行われているのではないと考えられています。こうした人間の色に関する分解能の低さは、さまざまな場面で錯視として現れます。
もっとも代表的なのが色と形に関する錯視です。
人間の眼は各錐体が明暗と色を別々に処理しています。
しかし各錐体は色には敏感に反応しても、光の強さに関しては鈍感です。
そのため夜になって明暗がはっきりしなくなると、とたんに物の色がわからなくなるのです。
このことを利用したのが以下のような錯視です。
色の同化
上段の赤が橙と赤紫に、下段の緑が黄緑と水色に見えます。
デヴァロイス・デヴァロイスの市松模様図形(De Valois-De Valois illusion)

上段の赤、下段の緑がそれぞれ周りに侵食されて見えます。
これらは色の分解能の低さをついた錯視で、「色の同化」と呼ばれています。明暗の差がなくなると形を認識する能力が弱くなり、隣接する色同士が混ざって見えてしまうのです。
私たちは3次元の世界に住んでいますが、網膜に映る像は2次元です。そこで生じる情報量の差を埋めるために脳はさまざまな処理を行っています。その間隙を突く錯視は、私たちに知覚の不思議を考えさせてくれます。
参照:
錯視の原理 - 形追記:興味のある方は2009年5月号のNEWTONにより詳しく載っています。
関連項目:
>>
ヘンペルのカラス>>
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